日立美術会
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第50回記念展エッセイ集 第16回  

福原さんの遺言 -奥村 昌之-

大先輩 福原三郎さんは、私が新卒入社一九五二年(昭和二七年)以来半世紀にわたってお世話になった方で、会社の上司であったと同時に、亡くなられるまで公私にわたり面倒を見てくださった。

当時日立工場には、現在の日立OB美術会の先輩の方々が多くおられ、福原さんは活発に活動されていたようだが、新入生の私には、絵の話は不思議となかったように思う。
しかし、お宅には、同僚と良くお邪魔して、酒を飲みながら技術展望、業界展望、国の将来など独特のアクセントと話術で我々をリードしてくださった。わずかの間であったが 私の人生に社会人として強烈な影響を与える二年間であったと思う。

当会に入って(平成十年)絵のご指導を得ることになったが、大から小まで実に丁寧かつ念入りに指導され、更に後で気のついたメモや切抜きや文献など送って下さった。
亡くなられた後、ご家族から一五〇ミリ×三〇〇ミリ位の黄色く古びた厚紙を頂いた。

それは紐で吊るすようになっており、アトリエの目の届くところに吊るされていたように思う。

(一)理屈でものを見るな (二)狙いを絞れ (三)部分にこだわるな (四)大胆に描け (五)絵具を惜しむな (六)うまく描こうと思うな (七)自分を甘やかすな (八)基本にもどれ (九)整ったらこわそう (一〇)粘りつよく詰めろ、 以上は 似たような内容のものを私も見たことがあるが、その後、ご自分で書き足された。
(一一)きれいどころで終わるな (一二)描かないところをつくれ (一三)色の孤立を避けよ、同系色で遠近をつくれ (一四)明度の大胆な変化。

いつも反省され、目標を追及されていた様子が伺える。
私は福原さんの遺言として今後も自分自身の目標にしてこだわってゆきたい。

 

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