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私の絵画論

私の好きな絵、描きたい絵 - 二村 邦子 -
私の好きな絵
香月泰男:青の太陽
1969年
山口県立美術館蔵
香月のコメント:(前略)蟻になって穴の底から青空だけを見ていたい。そんな思いで描いたものである。深い穴から見ると、真昼の青空にも星が見えるそうだ。

私には「私の絵画論」と言えるほどの意見は殆どない。私の絵の好みは年を経ると共に変化していくし、絵の見方も変わってくる。絵の表現方法は本当に多様で、どんな奇抜な表現方法を編み出そうと勝手である。画面の中ではどんな冒険でも許される。抽象画だけでなく風景画や人物画に於いてさえ、どんな非常識な表現方法を取ろうと自由である。この自由さが限りなく好きだ。色々な人が、個性豊かな表現をし、その中から優れたアートが生まれる。そして、稚拙な絵の中にもアートはある。

私が絵を始めた20代の頃は、小磯良平や向井順吉の絵が好きで、展覧会を見に行っては、彼等の描写力に感心したものだった。ところが今では彼等の絵は私の興味の対象外になってしまった。ユトリロ、セザンヌ、モジリアニの実物の絵が素晴らしかったといっては彼等の画風を真似したり、ブラック風に静物を描いてみたりした時代もあった。やがて、他人の画風を真似るのではなく、自分の感性を大事にし、自分の画風を作り上げるべきだと気付いた。

上野のとある公募展に何年間か出品し、賞を戴いたこともあるが、何年か続けるうちに公募展の評価基準や幾人かの審査員の資質に疑問を感じ、急に嫌気がさして出品するのをやめてしまった。賞は回り持ちということもあるのだろう。どこの美術団体もいろいろな問題を抱えているということも分かった。

今年の夏、アメリカ人とフランス人の友人6人、それとわれわれ夫婦、総勢8人がパリの小さなホテルで集合し、10日間ほどパリとプロバンス地方の美術館巡りをした。オランジュリー美術館に行ったとき、ローランサンの絵を集めた小さな部屋があった。フランス人の友人曰く、「パリではローランサンは殆ど無名なのに、日本ではローランサンの絵は人気があるようだけど、どうして?」と聞かれて困った。私もローランサンの絵の芸術的価値はあまり高くないと思っていたからである。しかし、芸術の評価は人それぞれだし、意見が異なるからこそ面白いという面もある。

それでは、今の自分はどんな絵が好きなのだろう。ピカソ、ド・スタール、エゴンシーレをはじめ、西欧の好きな画家の名を挙げたらきりがない。日本の画家の絵では、香月泰男(注1 及び冒頭に掲載の絵を参照)や三岸節子(注2)の重厚で単純化された抽象画のような絵もいいし、木村忠太の軽いタッチの絵も好きである。無名の画家の作品の中にも素晴らしい絵が沢山ある。

さて、自分の描きたい絵はどんなものかと考えると、色々あるが、目下の所、線と形と色彩の調和が取れた抽象画に夢中である。一方、風景画や心象画も描きたいと思っているが、これはなかなか思い通りに行かない。三岸や香月のように大胆に美しく描きたいと思うが、まだまだ修行が足りなくて納得のいく作品にはならない。尽きせぬ課題があって、絵を描くのは本当に楽しい。人生退屈することは決してない。

注1:北海道近代美術館の香月泰男関連のホームページ
    香月泰男美術館ホームページ
注2:三岸節子のヴェネチアの絵

 

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