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展覧会

リレー随筆 第26回  

絵を描く楽しみ -上村 昌司-

絵を描くことは小さいときから好きでした。中学時代に授業で新潟港へ写生に行き、手前のクレーンと対岸の遠景とを対比させて描いた絵は今も覚えています。しかしそれ以来筆を握っていませんでしたが、定年を期に10年前からスケッチの会に入り水彩画を始めました。写真はシャッターを切る瞬間までの勝負ですが、スケッチは少なくとも描き終えるまでは自然と対話することができます。四季折々の景色との一期一会が楽しく、また描いた後も長く記憶に残ります。気軽にスケッチブックを携えて旅行先で水彩画を楽しむのもいいですね。

平成19年、岡野寛さんからお誘いを受けて日立OB美術会に入会させていただきました。当初は水彩画を出品していましたが、深みのある重厚な油絵を拝見しチャレンジしてみたいと思いました。ちょうどその頃水戸生涯学習センターで油絵の初級講座が開催され受講しました。講師は光風会会員の三好義章先生で、『こんな構図はオガシイベヨ』と歯に衣を着せないご指導は大変心地よくみんなから慕われています。講座は半年で終了しましたが、有志が集まり同好会として震災を乗り越え現在も続いています。今はモチーフを風景から蒸気機関車に切り替え油絵を楽しんでいます。親が国鉄職員で新潟県内の海から山奥の各地を転々としました。官舎は駅の傍にあり汽車の音と振動が凄く、特に急行列車が通過するときは震度3程度の揺れに慣れるまで大変でした。でも今はそれも懐かしく思い出され機関車の動力源である動輪を主に描いています。10両近い客車を牽引するときには、時々出発時に175cmの動輪が空転する様は凄い。その力強い姿を思い出し、重量感のある石炭と油の匂いの染み付いた姿を描いています。なかなかその感じが出ませんが、これからも続けていきます。

展覧会で機関車の絵を拝見しますが、それは錆び付いた前世紀の遺物として捕らえた作品が多いように思います。私の狙いは昭和時代の機関車で、まだ現役で頑張っていたころの元気な姿を描きたい。これは自分の人生とも重なるところがあるのかもしれません。機関車を追いかけ熱気のある機関車に触れ、その雰囲気を大切にしながらキャンバスに向かい、時のたつのも忘れて描くことに至福の悦びを感じます。

日立OB美術会に入会し、当初は10号を描くのが目標でしたが、皆様から励ましをいただきながら今では80号に挑戦するまでになり、お陰様で昨年の茨城県美術展では初入選を果たすことができました。これからもよろしくお願いします。

新潟県鍋茶屋通り SM 動輪方式 30号
新潟県鍋茶屋通り SM 動輪方式 30号

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