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私のスケッチ旅行U〜現地スケッチ事例 - 中川 清-

(3)スケッチ先の人とのふれあい

ビクトリアンマーケット
スケッチをしていると興味を持った人が話しかけてくれる。短い会話でも風景とともに記憶に残る旅の思い出となる。いくつかを紹介したい。

平成8年初夏、旅行で留守の4週間を貸してくれるフラットを借りてミュンヘンに滞在した。二日スケッチに出かけた。初日は事務所街でフラウエンキルヘをモチーフにスケッチをしていると、地理不案内なドイツの若者二人に道を聞かれた。幸いJALの営業所近くで私が知っているあたりだったので教えた。事務所から出て来てこれを見ていた人が、適当に教えたのではないかと勘ぐって、歩き去る若者に近寄り私から聞いたことを問い直した。若者の答えに間違いがなかったので、その人は私を見てうなづいた。

翌日少し離れたビクトリアンマーケットでスケッチしていると、後ろから「中国から来ましたか?」と中国語で声を掛けられた。振り向いて「不是。我是日本人」と答えたら相手に通じた。台湾からの観光客だった。戦時中、青島中学で週1時間あった中国語が役立った。

この数日後レンタカーでザルツブルグからチロル二泊三日の小旅行をした。チロルの村での日曜日スケッチに出かけた。教会近くのレストランのまえで描いていると、ミサを終え家路に向かう人たちが出てきた。一人の少女が私の画を覗き込んで「ママ私たちの家が描いてある」というと、母親も絵をみて「家の色が違う。何故か?」という。私が「あとから、別の色をその上から塗る」といったが、理解したようではなかった。

平成12年初秋スイス・ツェルマットから登山鉄道で、マッターホルンの絶好の展望台ゴルナグラートに着いて直ぐ、テラスレストランの一番前のテーブルが幸運にも取れた。昼食を急いで食べテーブルの上にスケッチブックを出してマッターホルンのスケッチを始めた。急がないと他の客に迷惑だから彩色しないで鉛筆だけにした。同じテーブルで合席のドイツ人のグループが興味深く見ていたが、一人がいろいろと話しかけてきた。早く書かねばとあせっていたがお互い楽しい思い出になればと応対した。昼時でなくお茶の時間なら話が弾んだと思う。

一寸休みたいとき教会に入る。教会は街の中心部にあり、静かで中は適温、それに椅子が十分にある。地元や観光の人々がどんな振る舞いをするか見ることは文化の理解に役立つ。時にはローソクを求めてお灯明をあげ、亡くなった身内の人の冥福を祈る。これで気持ちがゆったりして落ち着く。インベーダーからインサイダーに近づく道かもしれない 。

(4)旅先のスケッチ

インドの合弁企業に昭和48年10月から2年間の単身赴任から帰任し一年半経って、週末は帰宅する東京への単身赴任になった。その後、年7〜8回の海外出張が続いた。家族にはゆとりができたら海外旅行の機会を作り埋め合わすと話していた。その約束の旅行だから旅先で私の好みを出来るだけ抑え、家族の希望を優先に心がけた。

昭和38〜40年デュッセルドルフでの経験から私が居なくても外食・買い物は出来るので、同じところに何日か滞在するとき、日を決めて互いに自由行動にした。ミュンヘンに4週間滞在中に、このやり方で市内を2日・チロルとウイーンで各半日単独行のスケッチに出かけた。レンタカーでの旅行は私がドライバーなのでスケッチは難しい。打開策は絵にしたいところの写真撮影以外になかった。このとき私が心がけていたことを下記する。

1. 景色の雰囲気が分かるように回りの写真も取るようにしている。経験から絵にするとき苦労するところが分かるので、そこはズームアップや近づいて写真を撮る。時には横や後ろからも写真に残す。影になった暗いところは全体像で真っ黒になり構造が分からないから、露出をそこにあわせて写しておく。
2. 山岳写真は空の露出がオーバーになり白く飛んでしまう。このときは空や雲の適正露出にして写す。特に日の出は山の色調が朝日を受けて刻々と変わり、それに気をとられて空や雲まで気が回らない。山の写真では失敗ばかりである。
3. 風景を見るときメインのところに焦点が合い、前後の離れたものはぼやけて見えるから、意図的に絞りを開き焦点深度を浅くして写し参考にする。
4. あとから風景に人物を入れたいことがある。人物のTPOは、季節・その土地にマッチさせるため、その場所で人物が入った風景写真を写しておくと参考になる。
5. 観光名所の大きな通りに交わる横の小道にその土地の生活が見える、面白い風景がよくある。パック旅行でも事情が許せば、自分の足で横丁に入ってみるとよいが、集合時間や集合場所を間違えないよう注意が必要である。

このように旅先で関心を持った風景は何年経っても覚えている。さらにそのとき入ったレストランと料理・・・とつぎつぎに思い出される。こうして旅が何回も楽しめる。

 

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