「絵に描いてみたいモチーフ」 -岩柳 要子-
そもそも最初に石の美しさに出合ったのは、二十代の半ば頃だったと思う。桂離宮の庭の石、京都本法寺の光悦の庭、鎌倉素庵の茶室への道、或いは信州で見た道祖神など、日本古来の石の肌や色の美しさ、重量感に惹かれた。
モノクロで写真を撮り、光と影のコントラストを楽しんでいた。
ここ十年、欧州の国々を旅するようになって、あちこちで見た遺跡、半分崩れ落ちたような城壁など廃墟に惹かれ、いくつか作品にした。
なぜこのような朽ちた風情に自分を表現したくなるのだろうか。ピレネーの山あいの村々では、あたかも古から時間が止まったような光景に触れ、石を積み上げてできた教会や民家に力強い美しさを感じた。それは歳月の流れに堪えてきた石が長い間そこで生きてきた人達のさまざまなものを語り続けているからに違いない。今も石が何を語っているのかを掴みたくて描き続けている。
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