「絵に対する想い」 -江川 隣之介-
嘗て大阪の我が家には石井柏亭の油絵が飾られており、岡山の六高時代には倉敷の大原美術館に足を運び、東京に移ってからは上野に出かけ、絵画に対する関心を深めていた。
その後、ホルベイン画材の東京支店長の勧めで油絵に手を染めた。四十年余り前のことである。やがて「桐朋チャーチル会」に参加し、東京美術学校出の熱心な先生の指導で絵具を選び、金属の絵具箱(銀座・月光荘特製)等も愛用した。
小田原の梅、長野の杏、上高地の写生にも出かけた。夏休で先生がパリに滞在中に私の出張が重なり、ルーブル・オランジェリー(モネの睡蓮)等を案内して頂いたこともあった。昭和六十三年以降は毎年二週間のヨーロッパ・スケッチ旅行に出かけ、本年で二十三回を数えた。
初期には現地で油絵を描き、携帯に便利なキャンバス・ホールダーも考案したが、現在では、水彩画で取材し、帰宅後油彩に仕上げることにしている。
風景を前にして絵筆を運ぶ醍醐味、自宅のアトリエでキャンバスに向かうゆとり、各所の展覧会を楽しむ慶びは何物にも代え難いもので、「絵のある生きざま」を既に半世紀も続けてきた。この後何時までも、持ち続けたいものである。
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