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展覧会

第50回記念展エッセイ集 第20回  

「普通の絵を描く」 -金子 一郎-

油彩画を始めて十数年経ちましたが、油彩画ってなんでこんなに自由な世界なのかと感じました。油絵はキャンバス上にいくらでも絵具を重ね塗りして訂正ができますし、途中でゴ―ストップがかかることもありません。また、絵の制作中に受けた感動を消滅しないうちに、色に載せて一気に描くことも出来ます。その上、油彩具の表現力の豊かさ、色彩の比類ない強さも魅力です。またモチーフの強烈な色彩に出合っても、油彩具の強さですべて思い通りに描けて楽しいものです。

先日、紅葉の裏磐梯へ写生旅行をしました時、その自然の雄大さ、美しさに圧倒され、しばしその風景に見とれてしまいました。この景色からどんな構図を切り取り、主役を決め、脇役をどこに置くか、また絵の中にどのような感動表現をするかを考えたりします。

教室の先生はいつも、生徒達に「普通の絵を描くように・・・」といわれます。
絵は自由で勝手、一般的に「いいな、欲しいな」といわれる絵は、普通に描いた絵が一番好まれるそうです。普通の絵って何だろう? うーん、自然界のルールに従ったもの、見たままの情景を、遠いものは遠く、近いものは近く描く。しかし、キャンバス上に絵を描くとなると、この表現がなかなか難しいものです。色による遠近感の出し方や、色と色のコントラストの強弱など、しっかり自然界をみて自然から謙虚に学ぶ姿勢が大切です。
遠近の色に対しても、絵具の使い方をよく見て、考え、実物を観察しながら、描く事が必要ではないでしょうか。

日頃、これらを習慣化し、そのノウハウを蓄積して、自然の法則に従って、素直な心で絵を描く事が、大事ではないかと思いました。
これからも絵描きを人生の道づれにして、充実した幸せな日々を送りたいものです。

 

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