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展覧会

第50回記念展エッセイ集 第25回  

絵画におけるある犯罪 -黒岩 裕介-

淡い夢を見て今年も日展に出してみた。結果はまだだが満足いく作品にならなかった。元来、絵は現場で現物と対して描くことを「よし」としてきたが、絵を描いていた父の遺した取材写真に、地名不明の感動の一枚があり、これを元に描いた六〇号は埼玉県展に入選した。

さらに同じモチーフで「古い街」と題して一〇〇号の日展作品の制作にかかった。

実家に法事で帰るたびに、何度も父のアルバムや資料を調べたが、全く地名の手がかりがなかった。

モチーフの雰囲気と家の形から当初イスラエル、次にスペインのトレドの外れだと自分に言い聞かせ、これで研究会も押し通したが、はっきりしない不安がだんだんと募り筆が鈍り始めた。何日もかけてインターネットで調べ、これが南イタリアの「マテーラ」と判明した時は既に遅く、絵は赤い屋根のスペイン風に仕上がっていた。現場を見ずして地名も分からずに描いたことは犯罪にも思え、その罪悪感との苦しい戦いを苦々しく反省した。次回は頑張ろう。

 

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