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私の絵画論 

遠近法について - 建脇 勉 -

近代絵画の父セザンヌ(1939-1906)は「普遍的遠近法」と呼ばれる方法を創造し、ピカソ、マチスを始めその後の画壇に革新的影響を与えた事は周知の通り。私の年代の小学校では、教科書も印象派の作品で、絵の先生も大気遠近法や幾何学的遠近法がもっぱらであった。従って、多くの会員の方はセザンヌ遠近法を学ぶ機会が少なかったように思います。

セザンヌは、三次元の感動した自然の風景を殺す事なく二次元のカンバスに表現する方法を発見したのでした。それはカメラのない時代の写実的絵画の価値から脱却して、自然の本質を表現することに意義を見出しました。つまり、「写真空間」から「絵画空間」に変えたと言われています。

山に感動して描こうとすれば、山は遠くにかすれて見えても近景よりも強く大きく感動を生かして描くことです。「セザンヌの構図」アールローラン著によれば、例の「サント、ピクトアール山」の作品と彼が描いたであろう場所での実景写真とを比較して山が如何に大きく強く描いたかを示している。ではその様にデフォルメや強調を変えて描くと、その絵画空間の遠近感覚はどうなるのでしょう。

彼は更に物体の面と面の追及から物から物との相対関係をとらえ、かつその面のバルールと言う概念を導入している。面の明暗で遠近空間ができ、色の特質である進出色と後退色を使ってその面積の大小を含んで遠近感を形成している。

この外、この絵画空間構成法は感動の再現のため、ムーブマンやリズム感をもり込むことや、物を描く視点を多点化するなど多くの工夫をしています。佐藤 哲(東光会理事)はこのバルールをコントロールするには、空や壁を近景に負けぬように強く厚塗りし近景の縮小化と平坦化をせよと言っている。

以上、近代的絵画の「普遍的遠近法」の一端を述べた。
一方、日本画の歴史を見ると、セザンヌ以前に驚くべき固有の遠近法が使われている。各種絵巻や草紙、水墨画、浮世絵などが示すように近代絵画に広く応用されている。立見先生(日立OB美術会・特別会員)の作品は18世紀の琳派の流れをくむ近代的平面画で色彩のバルールバランスと構成と装飾性が観る人に安らぎや快感を与えていると理解しています。

遠近法は洋の東西を問わず各種あり印象派の古典的構成にこだわらず広い識見で絵画鑑賞や作画に励むことは有意義と思っています。

参考文献
(1)「セザンヌの構図」アールローラン著  内田園生訳 (株)美術出版社 1991年 14版(学術書)
(2)「絵画の構図」横山了平著  理工学社 1985年 (学術書)
(3)「もっと自由に絵を描こう」佐藤 哲著 一枚の絵(株) 2004年 (実用書)

 

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