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リレー随筆 第19回  

音楽と絵画 - 岡野 寛 -

夢の後に
テニス仲間のKさんから、デユフイが描いた音楽に関する絵を紹介して頂きました。“バッハのオマージュ”、”青い五重奏”です。いずれも、作者の聴いた音が画面から鳴ってくるようです。

私の音楽の想い出は色々あります。小学生の夏、日差しが照りつける逗子の街を母に手をひかれて歩いていたときに耳にしたメンデルスゾーンのバイオリンコンチェルト、学童疎開先で毎晩隣室から聞えてきた、先生がオルガンで弾いているベートーベンの月光のソナタの3連音符、ベートーベンの第9の3楽章の静寂を打ち破る“歓喜”の圧倒的な独唱とコーラス、シューベルトの“死と乙女”の胸を締め付ける2楽章。みーんな自然界にはない音なのになぜか心の琴線に響いてきます。ピカソ、ゴッホ、ロートレック、大観の作品からも同じような心のざわめきが湧きあがってきます。別に同じ感覚体験をしていないのに。芸術とは本当に不思議です。

アメリカのレストランで“フュージョン”というジャンルがあるのを知りました。たとえば、日本食とフランス料理やイタリヤ料理がシェフの独創力で融合したものをいうようです。私も、音楽と絵画の心の琴線への訴えかけの”フュージョン”にチャレンジしたいと試行錯誤を重ねています。フォーレの“夢の後に”と“人生の襞”、カザルスの“鳥の歌”に感じる“千の風”の世界・・・・。 こんな無謀なトライアルができるのもアマチュア絵描きの特典と思っています。でも、年齢とともに感覚のみずみずしさが失われていくのをどうしたらいいか考えさせられます。やはり、ドンキホーテの世界かもしれません。

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