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私のスケッチ旅行 - 大熊 善治 -

私の山岳スケッチ旅行
私は山歩きが好きで良く出かける。山登りに没頭しているのでスケッチはあまり出来ないが、いつも頭の中にその山を描いている。仲間達と行く1,2泊のスケッチ旅行では、場所と時間に制約もあり特に油彩画は荷物も多く結構大変である。構図を決めてすぐに仕事にかかるのだが、午後になると山の色が変わってくるので午前中が勝負である。仕上げは帰宅してから始めるが、色は怪しくなり構想も違ってきて、結局風景は好きなように展開してしまう。何を描きたかったのかそれが納得できれば絵にならずともそれで良しとしている。実は景勝地や街角でスケッチする画家になりきることも、話しかけてくる人に絵を見せて答えるのはあまり得意ではない自分にとってスケッチの旅とは、何度も足を運べるような誰もいない農道に座り込んで、稜線を見上げながら山恋う回想に浸り夢中で書いているのが楽しいのだ。今回、「私のスケッチ旅行」というテーマを与えられたが、自分のつたないスケッチ経験と海外の山歩きで描きたかったお勧めのコースなどを紹介させて頂きます。

■スケッチ旅行にて
昔は山仲間の間で北アルプスの3大景観はどこか、と言うことになり「仙人池から仰ぐ剣岳」「蝶ヶ岳からの穂高連峰」「遠見尾根から鹿島岳の偉容」などが挙げられたことがある。絵画会の仲間達の宿泊写生旅行では、信濃路、安曇野の計画にはまり度々大糸線で木崎湖のほとりの温泉旅館を定宿として、プロ集団と同行する幸せに胸をときめかして出かけた。 何年か続いたが安曇野からの後ろ立山連峰や白馬青鬼の集落、そして木崎湖周辺など、白い峰、草葺屋根、稲田など良い場所が多く、いつの間にか身贔屓になってしまった。
ある時は私がお世話して上高地の公園活動ステーションに泊って河童橋の下に陣取り梓川からの焼岳、穂高連峰などを描いた。そして囲炉裏を囲んでいつもは見られぬ個性がぶつかる楽しい合評会の夜がふけた。  又西伊豆の大瀬崎も11月半ばを過ぎると富士山が海上にくっきりと聳え立つ。二度ほど挑戦したが、風が強くてイーゼルに錘を付けたり足を短くしたり工夫している仲間の仕事を盗み見たりして参考にすることも多かった。

海外の山歩きにて
この9月1日から10日間ツールド・モンブランに参加してスイス、仏、伊の国境の峠を越えて、山小屋を巡りトレッキングをしてきたが、モンブランやグランド・ジョラスの雄姿はとても言葉で表現できない。目で見た感動を心に焼き付けることは出来ても日本には持って帰れなかった。
写真も沢山撮ったがとても絵にはならず、その時々の思いは葉書やノートに描いたスケッチに重なり夢のようである。毎年1回山仲間達との海外山行きを続けているが、描きたい感動の山塊やその集落と人々に出会ったが、もう一度その場所に立って、時間を忘れていたいと云う夢のような思いを込めていくつかお勧めのコースとして紹介したい。

@ 中国 四川省の四姑娘山麓 パンダ保護区や九賽溝の奥にたおやかな白い峰があり、そのほとりの湖沼にはヤク(Yak)の群れが遊んでいた。
A 中国 雲南省 梅里雪山(神の座と呼ばれる名峰)とシャングリラ(チベットに近い草原で名著「失われた地平線」にでてくる桃源郷?)
B 中国とパミール高原 キルギスの草原と遊牧民とパオ 山と氷河と砂漠 美しい女性たちの民族衣装
C エベレスト街道 渓谷と吊橋 ネムチェバザールの村落と村人の生活 街道の建物や家畜や子供など全てがモチーフとして面白い

その他、北米ヨセミテの大岸壁やジャイアントセコイアの森など、行くのに難しい絶景ばかりであるが、その場所でのんびりと時を忘れて写生が出来たら本当に楽しかろうと思っている。


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