日立美術会
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美術サロン

  

私と絵   - 金子 一郎 -

60歳で定年を迎え、節目に家内と関西旅行の時、神戸のとある小さなギャラリーで油彩画の個展にあいました。中に入ってみると、そこはアマチュア老画家の30周年記念の個展会でした。その方は55歳の定年時から絵を始めて30年になるとのこと、若くお元気でした。展示された絵の数々は正にプロを思わせる作品で感動しました。幸い本人が居らして、いろいろとお話を伺うことができ共鳴し、やればできるんだという勇気をもらいました。

この出会いが絵を描く始まりになりました。最初はデッサンと水彩画を1年間学び、翌年「初めての油絵」の教室を手始めに、同好会の仲間と6年間油絵を習いましたが、絵の方は一向に上手くならず壁にぶつかる事も多く、もう絵を止めようかとも思いました。

その時偶然、ある教室の展示会に出会い、自分が思っている画風を感じ、早速入会したのが今の教室です。それまでに4人の先生につきましたが、やっと私が求めていた恩師安岡先生に出会え感謝しています。先生は長い間独自で築いてきた貴重な資料を惜しげもなく出され、絵の具の扱い方から、最低限知っていなければならない基本的な技術・技法まで教えて下さり、私は一皮むけた画風にチェンジする事が出来ました。そのときは正に「目からウロコ」の心境でした。絵を描くには「見る」訓練が必要なこと、「見える」から描ける、それには「眼力」を高める努力が必要な事を知りました。

また、絵は構図をしっかり決めて、「いいなーこの風景、このモチーフ」と思った時や、気持が動いた時にはタイミング良く描くようにしています。若い頃より趣味で写真を撮って来ましたので、多少映像に対する感性が残っていたのかもしれません。写真はファインダーで見た被写体を正直に再現します。しかし絵は写生風景の中に電柱や、邪魔な物体をカット出来ますし、また山を高くしたり、低くしたり、木を入れたり、花を咲かせたり、位置や色を変えたりもします。このようにあまり固定観念に縛られる事なく想像力を発揮して描きますが、その中でも「理性を捨て、心で描く」を指標にしています。

最後に、僭越ながら私の経験で得られた必要条件は、まず@有能な先生に出会うこと、A「視覚による表現」を磨く為に多くの展示会や画廊等で沢山の絵を見ることの2点です。絵ってステキですね。絵を描く中でいかに人生を楽しむかに尽きると思います。

これからも皆さんにはいろいろとご批評、ご指導を頂きながら、心のこもった絵を一枚でも多くお見せ出来る様に努力してまいりたいと思っています。

 

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