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研究会報告(立見先生の「金言」集) - 喜田祐三 -

第44回展は盛会のうちに4月5日(日)終了しました。立見先生による恒例の研究会が展覧会初日(3月30日(月))午前10時〜午後13時30分に開催され、参加人数は60名あまりでした。
筆者がいつも感じることですが、立見先生は作品講評のコメントの中でしばしば詩情豊かな表現をされます。第44回展研究会の中で筆者の耳に残った先生の「金言」の数々を列記してみます。 これらの「金言(1)〜(33)」を深く静かに考えてゆくと、とてつもないアドバイスに行き着くような気がします。勿論深く静かに考えるのは読者の皆様です。
以下、第44回展の「金言集」を列記します。

(1)
空間とボリュームが観る人に伝わってくる
(2)
力を抜いたところの表現がよい
(3)
木々のたたずまい
(4)
右下の空間と左上の雲が画面をやわらかくした
(5)
時雨(しぐれ)の質感 
(6)
水の要素は絵に大切だ、絵に深みと潤いを与える
(7)
神々の喜怒哀楽の情感と表情
(8)
質感はタッチでなく表情で出す
(9)
粗いタッチと繊細な表現の組み合わせ
(10)
白の強さが他の色を生かす
(11)
絵を汚すことの大切さ
(12)
〇△□の形状的要素を絵に入れることで絵が引き締まる
(13)
たらし込み、手作りに気持ちがこもっている
(14)
苦労した努力は必ず報われて強い表現となる
(15)
茶色に合うみどりを探せ
(16)
象を一頭、中心に描く気力に敬服する
(17)
上を見せたい時は下は暗く
(18)
空の空間にドラマや追憶を描きたい
(19)
空気の流れ、時間の流れ
(20)
絵本のような美しさと暖かさ、このような表現もある
(21)
光と木漏れ日
(22)
風景の創り込み
(23)
絵(構成)は欲張り過ぎてはいけない、ポイントを絞ること
(24)
ススキ、牧場、山、空、この作者は脱皮したね
(25)
創られた造形の中に写実を入れてみる 
(26)
人物や人形の眼の表現は大切である、両眼を強く描くより一方の眼を弱めて描く
(27)
斜め45度の山稜線がこの絵を決めた
(28)
桜は陰で描く(前回に続き2回目のコメント)
(29)
やわらかさと強さの共存
(30)
山の表現が暖かくて手に取ってみたい
(31)
手前も遠くも同じように細密に描いたところが面白い
(32)
ぼかしの良さとシャープな良さ
(33)
水平線をフラットでなく右下がりにした変化と面白さ

以上のように沢山の詩的表現をされました。 今回、筆者はこの中で(11)と(14)に着目します。
(11)は小学生がクレパスで描いた絵を見ると技術は高くありませんが、心をこめて一心に描いた気持ちが手の汚れという形で画面上に面白く表現されています。この汚れはなかなか大人には描けないものです。上手く描こうという気持ちではなく心をキャンバスにぶつけて一生懸命に描こうというひた向きさが汚れという「味わいある面白さ」となって表現されるということでしょう。
(14)は「追求」ということと同じ意味だと思います。こうでもない、ああでもない、と塗ったり削ったりしながら推敲を重ねて苦労すると仕上がった絵には苦しみや喜びが塗りこめられて深みと強さが出るということだと思います。

以上

 

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