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春季展研究会「第46回展・研究会報告」  
喜田祐三 / 陳列委員会

第46回OB美術会展の「研究会」が会期初日(3月29日(月))午前10時より、立見先生をお招きして会場で行われた。
立見先生は昨年8月の日本橋三越での特別展(個展)のあと体調を悪くされたが、お見受けする限りでは完全復活といった風情であった。
今回の研究会は出品者(93名)のうち2/3の当たる62名が参加して行われた。
立見先生のコメントはジョークとウイットに富んだ笑いに満ちたものだが、必ず心がけておられることは以下の2点である @私達を元気づけるために良い点を見つけて褒めてくれる。 A改善すべき点を一つ指摘してくれる。先生のコメントをよく心に留めて研鑽しよう。

「1」 総評
今回はベテランの絵がつまらない、おとなしい、元気がない。一方、新入会員や若い人の作品にユニークで個性があり元気のよい作品が多い。特に女性の作品が光っている。
作品は単なる写生でなく、説明でなく、新しい表現にチャレンジしている作品もふえた 。

「2」 作品の講評 (各階5〜6点)
全ての作品についての講評は省略するが、各階で印象に残った講評をメモする。

(1)4階
1.
井出勝彦(自然の空間シリーズ):
別のモチーフに挑戦してみると新しい発見があるものだ。この作品は青い種のような物体から新しい生命が生まれるようだ。
2. 富永哲夫(或る秋日):
とにかく上手い。構図の面白さ、1:2の縦長の画布の上部に主役を置き、下部に脇役を配するセンス。空白が私たちに語りかける不思議さ。
3. 長谷見次郎(夜市):
台湾の夜市か。屋台の雰囲気、臭豆腐の匂い、雑踏の騒音、人間の体温が伝わる作品だ。
4. 山崎浩二(公園):
よく対象を観察して描いている。ここまで説明すると説明が説明でなくなる。
5. 竹尾和代(春の日):
センスの良さ、造形力、色彩力、写実を絵にする力を持っている。
(2)3階
1.
大藤啓子(熊野(やゆ)):
いろいろな色彩を使ったが「色に破綻はない」。背景の金とかな文字、色、構図のバランスもよい。
2. 有田まさみ(日比谷公園(ハロウィーンの頃)):
気持のよい作品。色彩と構図、緑と影の関係もよい。
3. 曽我美智子(ベトナム):
大胆な水墨のタッチ、この絵にはドラマがある。
4. 山田徳太郎(轍・早春賦):
田んぼと轍にこだわり続けてここまで来た。空の青を轍跡にたまる小さな水たまりに滲ませてみた。謎めいたところが魅力だ。
5. 黒岩祐介(Printemps):
ヌードは一番魅力を感じた場所から描く。そこのところが描ければ80%は完成。背景は創作する。
(3)2階
1.
二村邦子(星空に願いを):
表現の自由さ、奔放さ、「静と動」、「明と暗」、「簡単と複雑」
いろいろの対比が素晴らしい。
2. 藤本元明(晩秋の流れ):
大胆な太い筆使い、水の流れの透明感、水底の色彩感、水の流れの柔軟さと岸辺の葦の硬直さの対比でこの絵は一層よくなった。
3. 恩田 博(彷徨):
色が美しい。空に少しの工夫を、、。
4. 徳田久子(モンサンミッシェル(フランス)):
霧の中のモンサンミッシェル、このような描き方も魅力的だ。絵を見る人に形を想像させる絵の力。
5. 桐生靖子(向日葵):
色彩のない美しさ。向日葵をモノトーンで強く表現する新たな挑戦。今までの作品で一番いいと思う。
(4)1階
1.
重永康彦(親子):
構図の着想に感心した。山羊の親子を描いている。これが模写だと聞いてがっかりした。しかし、構図、色の組み合わせ、など大いに勉強になったと思う。
2. 建脇 勉(建てる10‘s):
研究心と追及心。同じ構図で同じ色彩で同じモチーフで作品を追及し続ける精神に敬服する。この研究で彼は大きなものを会得したはずだ。
3. 松岡 潤(雪国の3月):
雪の質感と光と影。よくできている。
4. 中村高章(雪の日(輪が住む街)):
雪の道、いつも静かで、それでいて生活感もある。
添景人物の姿やおどけた動きにも作者の人間性がにじみだしている。
5. 安藤 雅(PARISの街角):
力強さとエネルギー、赤の使い方、強いマチエール。
今回は大作(F50)の「パリ」と小品(F10)の「箱根富士」の作品の距離が近づいた。
6. 山本 衛(待ちあわせ):
山本さんは赤の使い方の魔術師だ。これだけ赤を使って浮き上がらない。洒落た絵だ。

「3」 まとめ
立見先生は私達を元気づけるために良い点を強調して褒めてくれるが、先生は物足りなさを感じていると思う。100点の作品には100通りの彩りがあり、個性があるが共通して言えることは追及度である。個性や色彩を保ちながらとことん追求したい。画布に思い切りエネルギーを注入させたい。

 

 

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