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第65回記念「二紀展」を観て   - 喜田祐三 -


1.二紀展について

第65回記念「二紀展」が国立新美術館で去る10月12日から10月24日まで開催された。
見学させていただいたので、その感想を述べたい。

二紀展は次の世紀を担うという意味から「二紀」と命名されたと聞いている。
昭和22年に第1回展を開催していることから、日展や院展などと比べれば新しい歴史といえる。
しかし、今では日本を代表する画壇の一つである。
初代理事長は宮本三郎画伯、その後、田村孝之介、宮永岳彦など輝かしい画家が理事長を歴任した。
毎年、数1000点が応募されるがその中から今年は900点余が入選した。
二紀展は洋画と彫刻の2分野のみであることも特徴のひとつである。


2.立見榮男先生が「内閣総理大臣賞」を受賞

私達が日立OB美術会でご指導をいただいている「立見先生」は現在、二紀会の事務局長の要職にある。当然のことであるが同会の審査委員の一人でもある
今年、立見先生は最高の賞である「内閣総理大臣賞」を受賞した。
以下に今年、わたしが観た「二紀展」の印象を述べる。


3.立見榮男先生の作品「雷神・樗の風」

会場に入って2室目の正面に100号の立見榮男「内閣総理大臣賞」の作品「雷神・樗の風」が陳列されていた。横長の変形100号の作品である。桃山時代に俵屋宗達が創始し、元禄時代に尾形光琳によって花開いた、いわゆる「琳派」の流儀を立見先生は現代の油彩画の世界に同化させ、新しい立見榮男の世界を拓いたことは、すでに、2009年10月の本、HPに「立見榮男洋画展(野に棲むあるじたち)」と題して評論した通りである。

今回の作品は立見先生が持つ左右、前後、上下の沢山のポケットの中からいわば、光琳雛型と呼ばれる色々な雛型を実に巧みに配置し、緑を基調とした流れるような色彩の帯の中に再構成したものである。「飛翔する白狐」「河童」「人間猿」「ハスの花と実」「雷神、顔と足裏」「藤のつる草」などが登場するが、それらは存在感を発揮しながら一つの物語性をもって互いに響きあうのである。
ひとつひとつの要素(雛型)が連合体としての一つの世界を実現する。そして、大きな力をもって観る者を圧倒してくるのである。

もうひとつの立見作品の特徴は100号の宇宙の中に枠取りされた複数の小宇宙が存在することである。あたかも、銀河系のなかに太陽を中心とした太陽系が存在し、さらにその中に地球という小さな世界があり、我々が息づいているに似ている。それぞれの小宇宙が独立した1個の世界を有し、それらが巧みにハーモニーを持って大きなヒエラルキーの宇宙を形成している。

まさに、「内閣総理大臣賞」にふさわしい大作であった。


4.印象に残ったいくつかの作品

1階は1号室から8号室までの8室がある。主たる作品はそこに陳列されている。
二紀展には沢山の印象深い作品があるが、今年は3月11日に発生した忌まわしい「東日本大震災」の復興を願う作品も多かったと思う。

強く印象に残った作品は
◎玉川信一氏の「神の庭」
◎清水聖策氏の「xxxx」
◎米津福祐氏の「ライデン力」
◎吉野 純氏の「ガリラヤ湖の漁夫たち」
◎大西生余子の「美瑛」 
などであった。


5.最後に

今年、立見榮男先生が第65回記念「二紀展」で最高の賞を受けたことは私達、日立OB美術会にとっても大変うれしい事であった。

日立OB美術会展は来年4月に第50回という大きな節目を迎える。毎回、開催される「研究会」で立見先生から作品1点1点に心のこもったアドバイスを頂くが、私達はそれぞれのやり方でそのアドバイスを実践し前進したいものである。

 

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