私と個展 - 中村 高章 - 私がこれまでに個展をひらいたのは、十一年余前(平成七年十月二十五日〜三十日。会場は鹿友アートサロン)七十七歳のとき一度だけである。展示した作品の数は、百号一点のほか大小六十点ばかり。売る目的ではなかったが、家に持ち帰ったのは九点のみであった。多くの方々(一部は会社)のご好意によって、私の作品が夫々の方々の室内に飾って頂けたことは、私にとって大変貴重なことと思っている。
それは、明け暮れに私の作品に目を止めて頂けるわけで、常に私を身近に感じて頂けるよすがともなるわけである。平素なかなか会えない間柄でも、作品を通じ言葉無きコミュニケイションが限り無く続くこと、それが何より貴重なことと思っている。
この個展に先立って、画集「拙き画筆」を刊行した。それは、画集の「まえがき」にも書いたが、「満七十七歳を機に人生の一つのメモリーとして」、また「これまで深いご交誼をいただいた方々へ、感謝の一端として贈呈したい」という思いからであった。画集をお頒けしたこともあって、ご来場者は七百名近くになり、われながら驚いたが、ご来場者芳名簿は、大切な宝としている。
私の個展を省みると、「喜寿」を機に、それまでに描いた作品を集めて、人生の一つのメモリーとしてひらいたものであった。やはり個展を目的として、評価に堪える作品を制作しようと努力した作品とは、違うのではないかと思われる。その意味で力倆の向上に、より資するためにも、可能な限り個展を志すことが望ましいように思われる。 私は本年「卆寿」。これを機に第二回の個展をやるべきかどうか、いまは思案中である。
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