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リレー随筆 第6回  

透明水彩画遍歴 - 粟根 洋 -

私は子供の頃から絵が好きで小学校3年生の時にはすでに子供向けの絵画塾に通い、中高時代は多くの機会を捕えて人物像や街並みの絵を描いていた。ある日図画の時間に邸宅を描いていたらかっこいいお姉さんが出てきてその絵を頂戴と言われた。女優の高杉早苗さんだった。大学時代は絵画部で油彩画を描いていた。通常土曜日の午後は人物デッサンやクロッキーに熱中し、夏季合宿や大学祭展示や徹夜のモニュメント作りが楽しかった事を鮮烈に覚えている。上野の美術館でデッサンのモデルさんにばったり出会い、着衣のモデルが美しいと感じたこともあった。在職中の45年間は神武景気に始まる高度成長期で絵を描く時間は無かったがカメラに凝り、構図構成力の勉強になった。こうして私の第二の人生のスタートは68歳からである。

65歳の頃、仕事の傍ら淡彩画の通信教育を受け、絵画感覚を少し取り戻した後、透明水彩画のスケッチ教室に入った。現役時代のカメラ経験から透明性のある画像に魅力を感じていたので、NHK文化センター青山教室(富士フイルム会社とその絵画部出身)の五十嵐吉彦先生の教室には惹かれるものがあった。以来5年間、先生に師事し、江戸東京百景や大江戸沿線24景なども描き、日立OB会の他3つの同好会活動も行なってきた。油彩画へ戻ることも考えたが、水彩画を続けているのには以上のような理由があった。

私は世田谷の代沢に生まれ、生活して来た「緑と水辺多き東京」に愛着を持っていて、この7年間、江戸・東京の街並みを描き続けて来た。都心近くに住む私にとり有り難いことは整備された公園や歴史的建造物に恵まれ、活気ある市街地やウオーターフロントもあり、また最近はシルバーパスの足があることである。このように世界の画家がパリの街を描いたように、歌麿の江戸時代以来の東京の街並みにも描くべき題材が多い。

さて、私の画法はペン彩画または透明水彩画であるが、この画法のシニアとしての魅力は心引かれる風景の中に身を置いて、光や風を感じながら、その感動場面を短時間で描き上げることで心身ともにリフレッシュ出来ることである。そして画法の要点は以下である。

(1) 「F4サイズ以下の選択」〜近郊・旅先・現場スケッチ・自室制作に利便性がある。(2) 「線描きの活用」〜スピーデイにペンを走らせる技術がメリハリのある線による形を表現出来る。(3) 「遠近法の活用」〜立体感・奥行き感を出す為に透視図法と空気遠近法を活用する。(4) 「透明水彩の活用」〜混色・重ね塗り・ぼかし・にじみを用いて微妙な色合いの魅力と鮮やかさを演出できる。(5) 「紙の白さの活用」〜白紙部分を描き残し、光とかげや時の流れを表現できる。

要するに、この画法の特徴はシニア層が時間を有効に使えるスケッチのこつであり、風景をリアルに見せるわざであり、さらに光輝く画面を作り出すための知識とテクニックである。また、重要な役割として、描き上げた絵を家庭や他に飾るにも適切なサイズである。

しかし、大学や会社のOB会に所属していると、「美術展」や「公募展」活動ではより大型の絵も描かねばならず、私の古くて新しい課題であり、今までの画法の延長上にどう展開すべきか、試行錯誤の日々である。在職時代の自由時間10万時間同様、第二の人生の自由時間も10万時間あると言われるが、このうち私に残された時間は後どのくらいか? 先ずは健康と挑戦心の持続が鍵のようである。

さて、話は変わるが、国際化の波に洗われるであろう自宅と近隣に住む子供や孫たちに文化を味わって貰いたいとやや広めの玄関ホールとやや狭目の自室を「家族のホームギャラリー」とし、同時に、「家族作品のバイリンガルホームページ作り」も考慮中である。

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